このシリーズでは、エリオットが東京ガスと豊田自動織機に関与した話を書きました。今回から新しいアクティビストを追います。オアシス・マネジメントです。
エリオットが「隠れた企業価値の解放」を狙うとすれば、オアシスの戦い方は少し違います。ガバナンスの失敗を問う。不祥事を起こした企業に入って、経営責任を追及しながら株価を回復させる。そういうファンドです。
その舞台のひとつが、小林製薬でした。
2024年3月、何が起きていたか
2024年3月22日、小林製薬は紅麹を原料とするサプリメントの自主回収を発表しました。多数の入院者が報告され、社会問題となりました。
問題の本質は製品そのものだけではありませんでした。小林製薬が腎疾患の症例が出たことを最初に把握したのは同年1月中旬でしたが、世間に公表したのはリコールを発表した3月22日です。リスク情報の公表まで2カ月以上を費やしました。小林製薬 取締役会の総括
「製品の問題」ではなく「経営の問題」——オアシスはそこを見ていました。
報告書が提出された日
2024年7月24日、オアシス・マネジメントが小林製薬の株式5%超を取得したとして、関東財務局に大量保有報告書を提出しました。取得した株式は406万2,075株、発行済株式総数の5.2%にあたります。
報告書の保有目的欄にはこう書いてありました。
「ポートフォリオ投資および重要提案行為。」
エリオットが東京ガスで使った「重要提案行為」と同じ一文です。ただ、エリオットが「資産効率の改善」を狙ったのに対し、オアシスが狙ったのは「ガバナンスの刷新」でした。
オアシスは何を求めたか
報告書の提出から約4ヶ月後、オアシスは動き始めます。
2024年12月5日、オアシスは説明資料を公表して公開キャンペーンを開始。小林製薬の株主に対して「オアシスの提案に賛成票を投じるよう要請する」と呼びかけました。
要求の内容は3つです。
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新たな社外取締役3名の選任 (製造物責任・医療・法務の専門家)
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会社法が定める「調査者」の選任
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臨時株主総会の開催
オアシスが攻撃の矛先を向けたのは、一橋大学名誉教授の 伊藤邦雄氏やイー・ウーマン社長の佐々木かをり氏など 4人の社外取締役で、食品衛生に知見を有する者がおらず、 適切な監督を怠ったと主張しました。
さらに、オアシスは旧経営陣を含む7人に損害賠償を求める 提訴請求をしたことも明らかにし、見積もる損害額は 合計約110億円でした。
(出典:Business Wire [2024年12月] / [2025年1月])
買い増し続けた理由
オアシスの保有比率は、報告書提出後も増え続けました。
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2024年7月24日5.2%(初回報告書)
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2024年11月19日7.54%
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2024年12月25日10.1%(筆頭株主へ)
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2025年12月26日13%超 (出典:[EDINET])
オアシスは小林製薬の紅麹原料などによる健康被害問題を巡り、 問題発覚当時の取締役7人に約110億円の損害賠償を求める 株主代表訴訟を起こすなど、ガバナンスや創業家らの責任を 問う姿勢を強めました。 (出典:Business Wire)
買い増しながら訴訟を起こす。これがオアシスの戦い方です。
対象期間のチャート
報告書が提出された2024年7月19日前後のチャートです。

報告書提出直後、株価は一時的に上昇しましたが、 その後は低迷が続きました。紅麹問題による業績悪化とブランドイメージの毀損が重なり、株価の回復には 時間がかかりました。
オアシスはそれでも買い増しを続けた—— 「短期の株価ではなく、ガバナンス改善後の企業価値」 を見ていたということです。
大量保有報告書が教えてくれたこと
紅麹問題が世間を騒がせていた2024年7月、EDINETには静かに報告書が提出されていました。
「重要提案行為を行うことがある」という一文を読めば、この後オアシスが経営陣の責任を追及し、取締役の交代を求めていくことはある程度見えていました。
不祥事のニュースは誰でも見られます。でも報告書が出た瞬間に気づけるかどうか——そこに差が生まれます。