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動いていない一通が、注目の先頭に来た

2026年9月5日

金曜日の通知は111件あった。その日の⭐注目の動きの、いちばん上に来ていたのがこれである。

動いていない一通が、注目の先頭に来た

株式会社電通総研 4812 変更 No.10 株式会社電通グループ [非公開化] 61.76%(±0.00)

保有割合が動いていない。前回も61.76%で、今回も61.76%である。

⭐は、その日の報告書から5件だけを選んで置く欄だ。アクティビストの新規や、大きな増減が入る。1株も動いていない報告書が先頭に来るのは、これまで無かった。

60日欄が、空欄だった

原本を開いた。

提出事由の欄には、2つ書いてある。保有目的の変更と、株券等に関する担保契約等重要な契約の変更。

そして直近60日間の取得処分の欄は、行が1本も無い。空欄である。この60日間、買ってもいないし売ってもいない。

では何が変わったのか。担保契約等の欄に、8月31日付で結んだ契約が2つ書かれていた。

一つは不応募契約という。要約せずに書くと、こういう内容である。

提出者は、本公開買付けが開始された場合、所有する発行者株式を一切本公開買付けに応募しないこと

もう一つは株主間契約で、譲渡制限や優先交渉権などを取り決めている。あわせて保有目的欄には、株式併合の効力発生日までの間、所有株式について譲渡も担保権の設定も一切行わない、と書かれていた。

動かさない、という約束である。

大量保有報告書は、動いたときに出るものだと思っていた。この一通は、これから動かさないと決めたから出ている。60日欄が空欄なのは当然で、これから先も空欄のままになる。

「非公開化」と分かるのは、どこを見たからか

Martifyがこの一通に非公開化というラベルを付けたのは、保有目的欄にこう書いてあったからだ。

本公開買付けの成立を条件に、公開買付者とともに、発行者の株主を提出者及び公開買付者のみとするためのスクイーズアウト手続(以下「本スクイーズアウト手続」といいます。)として会社法第180条に基づき発行者株式の併合(以下「本株式併合」といいます。)を行うこと

株式併合。スクイーズアウト手続。手続の名前が書いてある。

判定はこの手続の名前で行っている。完全子会社化、株式併合、スクイーズアウト、株式等売渡請求、全部取得条項。こうした語のどれかが保有目的欄にあれば、非公開化と判定される。

「非公開化」という語そのものは、判定に使っていない。

「非公開化」という語は、別の場所にも出てくる

なぜ使わないのか。同じ語が、まったく違う意味で書かれている報告書があるからだ。

8月に届いたものから2つ引く。

C&I Holdingsシティインデックスイレブンスの報告書には、保有目的欄に番号を振った項目が並ぶ。

  1. 資本政策の変更(増配及び自己株式取得)

  2. 事業及び資産の譲渡(株主価値向上に資することのない資産及び事業(子会社を含む))

  3. 事業及び資産の譲受け(業界再編についての提案)

  4. 株式の非公開化(MBOを含む)

4番目に入っている。ただしこれは、これから非公開化するという話ではない。提案しうることの一覧である。 同じ4項目が、日本化学工業でもヤマダホールディングスでも、まったく同じ文言で並んでいた。

ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドのほうは、また違う。

企業価値と株主共通の利益の観点から、非公開化やスピンオフを含むすべての経営戦略オプションを予断なく検証することを提案し

これは2025年12月に投資先へ送った書簡の要約として書かれている。過去にやったことの記録である。 明星工業、那須電機鉄工、荏原実業、ノーリツ。8月に届いた4通とも、この段落が一字一句同じだった。連名の3社それぞれの欄に入るので、1通のなかに3回ずつ載っている。

これから起きること。いつでも提案しうること。過去にやったこと。同じ「非公開化」という語が、3通りの時間で書かれている。

語だけを見て拾うと、この3つが同じ棚に入る。

項目が8つ並んでいた

同じ9月の通知に、もう一つ新しい表示が出ている。⭐の中に、こういう行が付く。

要求 役員人事・組織再編・事業譲渡・配当方針・上場廃止・資本政策・支配権・資本効率

日邦産業(9913)に届いた変更報告書No.5に付いていたものだ。8項目並んでいる。

この報告書は、保有割合が17.00%から17.00%で動いていない。提出事由は保有目的の変更である。中身を見ると、8月27日付で発行者に具体的な提案をしたことが、保有目的欄の末尾に段落ごと追加されていた。

では8項目は、その新しい提案の中身なのか。

違う。

前の一通、変更報告書No.4を取り寄せて並べた。7月3日提出、事由は保有割合の1%以上の減少。保有目的欄の前半が、No.5と一字一句同じである。そこには(1)から(4)の項目が並んでいて、組織再編、事業譲渡、役員構成、配当方針、資本政策、上場廃止、支配権の取得——8項目のうち7つに対応する語が、すべて入っている。

7項目は、7月の時点で既に書いてあった。 今週新しく足された段落から拾われたのは、残る1つだけである。

この表示は、保有目的欄に現在なにが書かれているかを分類したものだ。今回あらたに要求されたこと、ではない。並んでいる項目の数が増えても、それは今週の動きが大きいという意味にはならない。

書いていない側は、取れない

もう一つ、正直に書いておく。

同じ日、共和工業所(5971)にOld Peak Group Ltd.から届いた報告書は、ラベルが同じ重要提案でありながら、要求の行が出ていない。

保有目的欄が、この一文だけだったからだ。

長期投資並びに株主価値の向上及び保全のため重要提案行為等を行うことがある。

拾える語が一つも無い。だから行ごと省かれている。

ここで注意がいる。表示が無いことは、何も要求していないという意味ではない。 この提出者も重要提案行為等を行う意思を書いている。列挙の形で具体的に書いていないだけだ。

丁寧に書き並べる提出者からは項目が取れて、短く済ませる提出者からは取れない。表示の有無は、書き方の差でもある。

保有目的欄を読むということ

先週、ビープラッツの3通について書いたとき、原本にあって通知にない情報として保有目的欄を挙げた。

ラベルは原本の要約であって、原本そのものではない、とも書いた。 原本を開けば、たしかに本人たちの言葉がある。ただ、その言葉がいつ書かれたものかは、 その欄を見ただけでは分からない。

今日の予定と、去年の記録と、いつでも言えることが、同じ枠のなかに並んでいる。前の一通を取って突き合わせるまで、どれがどれかは決まらない。

気になった一件は、前の報告書も一緒に開いてみてほしい。

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