7月1日のMartifyの通知に、こんな一行が並んでいた。
新規 株式会社ディー・エヌ・エー 2432 株式会社シティインデックスイレブンス 重要提案 5.06%

「新規」。旧村上ファンド系のアクティビストとして知られるシティインデックスイレブンスが、DeNAに新しく5%を持った——そう読むのが自然だと思う。ゲーム会社に物言う株主が入った、と。
でも、この「新規」は初参入ではない。同じ株主が、同じDeNA株で、これが少なくとも3回目の「新規」だった。今回は、その「新規」という言葉の落とし穴を、一度きちんと見ておきたい。
3回の「新規」——同じ株を、出たり入ったり
シティインデックスイレブンス名義の大量保有報告書だけを、報告義務発生日の順に並べるとこうなる。
※提出日(報告義務発生日) 新規 or 変更 保有割合 → コメント
去年の10月に初めて5%を超え、数日で6.31%まで積み、11月には4.25%まで減らして一度5%を割った。12月にまた5%を超えて「新規」。年明けに8.28%まで積み上げ、そこから少しずつ減らして、7月にまた5%を割り、また超えて「新規」。
同じ相手が、同じ家の玄関を、9か月で3回くぐっている。表札には毎回「新規(NEW)」の札がかかっている。
なぜ同じ株主が、何度も「新規」になるのか
大量保有報告書は、保有割合が5%を超えたときに出す書類だ。裏を返すと、5%以下に下がって、また5%を超えれば、制度のうえではまた「新規」の大量保有報告書になる。
だから「新規」というのは、その株を初めて買ったという意味ではない。保有割合が、いま5%のラインを下から上に超えた——そのイベントを指しているだけだ。前に持っていたかどうかは、この一語からは分からない。
割合が動く理由も、株の売り買いだけではない。大量保有報告書は、一緒に動く仲間(共同保有者)の分も合算して割合を出す。だから共同保有者の顔ぶれが入れ替わると、それだけでグループ合計の割合が変わる。DeNAの場合、シティインデックスと名を連ねる共同保有者は、報告のたびに入れ替わっている。誰と組むかが変われば、5%ラインの出入りも起きる。
バッジは「状態」ではなく「イベント」
ここがこの回のいちばん言いたいところだ。
Martifyのメールに付く 新規 変更 訂正 のバッジは、その日届いた1通の報告書が「どの種類か」を表している。前回比の増減も、同じように"1つ前の報告書との差"だ。つまりバッジと増減が語っているのは、届いた直近の1通のことだけ。
その株主が、この銘柄で過去にどこまで積んで、どこで引いたか——そういう累積の物語は、1通の報告書の中には入っていない。「新規 5.06%」という札の下に、8.28%まで積んで畳んだ半年があることは、その1通だけを見ても見えてこない。
だからMartifyは、報告書ごとに原本PDFへワンクリックで飛べるようにしている。累積をたどるのは、そこから先の読者の仕事になる。バッジは入口で、物語は原本の側にある——正直に言えば、そういう設計だ。1通1通を速く届けることはできても、「この人はこの株で何をしてきたか」を1通に畳み込むことはできない。
(ちなみに同じDeNA株では、証券会社(野村證券名義)の在庫玉も、5%前後を出たり入ったりして「新規」「変更」を繰り返している。中身はアクティビストの動きとはまるで別物——在庫・運用の増減——だけれど、「新規が何度も出る」という現象そのものは、そう珍しいことでもない。)
じゃあ、どう読むか
「新規」を見たときに、これだけやると読み違いが減る、という手順を書いておく。
-
初参入か、出戻りかを確かめる。 原本を開いて提出者名でさかのぼるか、銘柄の保有履歴を眺める。「新規」の下に過去があるなら、それは出戻りだ。
-
出戻りなら、ピークと引きラインを押さえる。 その株主がこの銘柄で「どこまで積んだか」と「どのラインで引いたか」。DeNAなら、ピークは2月の8.28%、出入りの下限は5%すれすれ、と分かる。
-
今回の新規が、ピークへの買い直しか、下限での入り直しかを見る。 7月の5.06%は、8.28%まで積んだ相手が、いったん畳んで下限で組み直した局面にあたる。強い増圧というより、ポジションを回している途中の一コマ、と読むほうが素直だと思う(もちろん、ここから積み上がる可能性も消えてはいない)。
-
そのうえで、保有目的欄は毎回見る。 割合が出たり入ったりしていても、DeNAでの目的は一貫して「純投資、および状況に応じた重要提案行為等」。数字は振れても、関与の姿勢そのものは引っ込めていない。割合の出入りに気を取られて目的欄の一貫性を見落とすと、いちばん大事なところを読み違える。
割合は表情で、目的欄は本音、くらいに思っておくといいのかもしれない。表情はころころ変わる。
おわりに
3回目の「はじめまして」をされたら、さすがにこちらも気づく。「はじめまして、じゃ、ないですよね」。
何度でも出入りする相手ほど、1回の「新規」に驚くよりも、これまでの出入りの軌跡を並べて眺めたほうが、間合いが見えてくる。「新規」が来たら、驚く前に、まず過去をさかのぼる。それだけで、同じ通知がずいぶん違って読めるようになる。
提出者が「誰か」で温度を読む話は提出者の種別ガイドで、報告書のどの欄を目立たせ、どの欄をあえて引いているかは「動いた一握り」を目立たせる回で書いた。今回の「割合は振れても目的欄は一貫」という読み方が気になった方は、そちらも合わせてどうぞ。
大量保有報告書をなるべく早く受け取りたい方は、ぜひMartifyをお試しください。ベータ版のいまは無料です。